掌編小説【心の底から殺したい】
午前2時。
暗い部屋に時計の音がこだまする。
目を瞑ってみても瞼の裏ではグルグルと目玉が回る。
ボヤボヤと頭に浮かんでは消えてを繰り返すのは今日の失敗、昨日の失態。
何年にも前にかいた恥が未だに私の胸の内でぐるぐると渦巻いている。
羞恥やら後悔やら反省やら嫌悪やら。
ドロドロとへばりつくこの気持ちはきっと
私が死ぬまで残り続けるのだろう。
いつまで経っても脳裏に、胸の内に残り、
思い出してしまうのだろう。
不快な過去の記憶に歯を食いしばって耐える。
奥歯がギシギシと不快な音を立てる。
食いしばり過ぎて喉の奥から這い出る不快な悪心。
不快だ。不快だ。不快だ。
あの頃の自分を殴りたくなる。
殴り殺したくなる。
「なぜお前は」と胸ぐらを掴み、
渾身の力で打ち倒したくなる。
ギリギリと奥歯が歪む。
握り拳を心臓に打ち付ける。
どんなに歯を食いしばっても
どんなに拳を握り締めても、
それは叶わないことは知っているのに。
そうしてまた、眠れなくなる。
頭の中で自分自身を殺しているうちに朝になる。
何人自分を殺しても、
何度拳を打ち抜いても、
枕に顔を押し当てて腹の底から汚い言葉を吐き出し続けても、
タールがへばりついたままの胸の息苦しさは変わることはなかった。
了